ヒストリア(歴史のネタ)

まさかまさか自分がblogを始めるとは・・・(苦笑)。 授業に使えそうな「歴史のネタ」を中心に書いていこうと思います。

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イスラム世界の血縁主義.txt

「トーキング・マイノリティ」より引用
イスラム圏、殊にアラブ世界ではイスラエルべったりでムスリムには厳しい欧米の姿勢をダブル・スタンダートと非難する。もちろんアラブ側の非難は正しい。だが、欧米の二重基準を糾弾する中東世界もまたその縁故主義、身びいきは凄まじい。血縁重視主義は日本の比ではなく、むしろ儒教圏に近いものがある。アラブに限らず、イラン、トルコも人間関係の基本は血縁なのだ。
「水は血にならない」というアラブの諺がある。血縁関係のない者は結局のところ他人、との意味であり、英語の“Blood is thicker than water”の訳である「血は水よりも濃い」以上に血縁絶対が強い。日本ならいとこの子供同士さえ顔を見たことがないという例も少なくないが、そんなことはイスラム世界では稀らしい。血が繋がっている者は必ず交際し、複雑な権利や義務を持っている。「遠い親戚より近くの他人」の諺が成立する日本とはかなり違うのだ。
 中東の血縁関係とは生物学的な関係であり、日本式の擬制的な血縁関係ではないと、トルコ史研究家の大島直政氏は指摘する。日本では嫁が夫の両親に対し、「おとうさん、おかあさん」と呼ぶのが普通だが、アラブ社会なら「おじさん、おばさん」が一般的だという。本当の父母ではない者を父母とは呼べないからだが、日本でそんな呼び方をしたら、離婚騒動となっても不思議はない。そのためイスラム社会では、日本式の「ウチの会社(または役所)」という観念や表現はありえない。もしあったとしても、それなら組織のトップから末端に至るまで血族で固めた場合である。この血族も本当に血の繋がる者であり、単に婚姻関係があるだけの者は血族ではない。何しろ、シャリーア(イスラム聖法)では養子さえ禁止されているそうだ。
 シャリーアがそれほど血縁関係を重視しているのは、アラブはもちろんトルコ、かつてのペルシア(イラン)も全て遊牧民だった伝統によると見られている。移動生活が基本の遊牧民は農耕民と異なり、「地縁」とは大して関係がない。だから遊牧民にとっての人間関係はあくまで血縁の有無が第一で、それが発展した部族意識が人々の行動の基本となるのだ。それゆえ、己の属する部族の行動の善悪はともかく、部族の幹部会議で決められたからには、それに従わなければ、村八分ならぬ「部族八分」となり、社会的な権利を失うのだ。曲がりなりにも近代国民国家をつくり上げたトルコさえ、西欧流の個人主義を身に付けた者には、「ドイツ帰り」呼ばわりされるらしい。血縁関係をないがしろにしたがる西欧かぶれの意味合いも含まれるという。
 絶対君主制と思われるサウジアラビアも、一皮むけば今も部族連合国家そのものなのだ。初代国王イブン=サウードが百回以上(!)も結婚したのは好色ばかりでなく、全ての有力部族長の娘に子を産ませることで、サウード家との血縁関係を基本とし、部族間の「大部族化」を図ったのだ。サウジアラビアの国名からして、「サウード家のアラビア」の意味。その「家」も部族であり、日本の「家」とは観念がまるで違う。
 同じアラブ人のムスリムでさえ、部族も異なり血縁関係がないなら赤の他人となるのだから、ましてや異民族、異教徒に対する姿勢は想像が付く。イギリス人イスラム学者バーナード・ルイスはイスラム社会の異教徒、女性、奴隷への扱いを「聖なる差別」と表現していた。西欧のキリスト教による“聖なる差別”はさておき、異教徒、異人種には公平な態度など望むべくもないのがイスラム圏。
 ムスリムが好む言葉に平等、公正があるが、逆にそれが実現困難な社会であるのが伺える。平等や公正が行き渡っているならば、この言葉の使用度は至って少ないだろう。礼節をモットーにする儒教圏こそ、非礼節がまかり通っているのと同じく。
 先の五輪予選ハンドボール大会で所謂“中東の笛”が問題となったが、この先も同じ現象が続くのは明らかだ。ただ、中東の強烈な縁故主義を封建的と批判する欧米も身びいきなど当り前であり、頻繁なルール改正を見ればアジア・アフリカに公正な態度など取らないだろう。ハンドボールなど火中の栗を拾わされ、韓国に利用されたのが日本なのは言うまでもないが、政治とスポーツは別と本気で信じているのは日本くらいかも。
■参考:「イスラムからの発想」大島直政著、講談社現代新書
http://blog.goo.ne.jp/mugi411
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